第192回 もののはじまり

国語のテキストを作成するにあたって、できるだけ面白い文章を作るようにしています。そのために『もののはじまり』〈ひかりのくに〉などの本も参考にしています。その本を読んでいると、いろいろ興味深いことが載っていて勉強になります。

例えば、「プール」です。日本の学校プールが最初にできたのは、1916(大正5)年だそうです。それは、今の大阪府の府立茨木高校の生徒たちが協力し合って工事を行い、半年かかって完成させたそうです。当時の高校生たちは、とても自主性が高かったのかもしれませんね。

また、今、多くの学校では始業時に「キンコンカンコン♪」というメロディーが流れます。これは「ウェストミンスターの鐘」という曲名で、イギリスのロンドンにあるウェストミンスター宮殿の時計塔が奏でる曲です。以前、学校では始業の合図はブザーやサイレンでした。それがこの曲に変わったのは、今から約50年前、私が中学生の頃だったと思います。

さて、私共の会社のすぐ近くには、同志社女子中学があり、朝の始業時にはこのメロディーが聞こえてきます。それを聞く度に、私は中学生の頃を思い出します。

第191回 伊能忠敬

伊能忠敬は日本各地を測量し、初めての正確な日本地図を作成した人物として、教科書でも有名です。彼は1800年から足かけ17年間、蝦夷地から九州まで10回にわたり測量し、外国の専門家も驚くほど緻密で正確な地図を作成しました。彼に関する逸話はいろいろとありますが、私が最近「面白い!」と思ったのは、熊本県の郷土史研究家である平田稔氏の文章から知ったことです。

氏は、伊能忠敬の測量チームが、どのようにして各地を測量していったかについて研究し、その一部を日経新聞7月10日朝刊にて発表しています。私は伊能忠敬の測量の仕方は次のようだろうと思っていました。
①数人のチームが歩測などしながらコツコツと各地を歩く。
②そのデータをまとめて地図にしていく。

さて、それについてじっくり考えてみると、このような方法では17年かけても日本地図を作ることは物理的に不可能だと言えるでしょう。日本の沿岸の海岸線を歩くだけで相当な距離があり、それを数名の人間が踏破しつつ地図にしていくわけですから、それは気が遠くなる作業です。

私は平田氏の文章を読んで、ようやく伊能忠敬の地図作りのシステムを理解することができ、「なるほど、それはすごい仕組みだ。それなら何とか17年あればやりきることができるだろう」と感心するとともに、納得しました。それは次のような仕組みです。

まず知らねばならないのは、伊能忠敬の測量は、途中から幕府の事業となったため、全面的に幕府の協力のもとに進められたということです。伊能忠敬の測量の計画が固まると、幕府は関係する藩の江戸屋敷に通達を出します。すると、藩邸は直ちに国元に飛脚便を出し、地元にいろいろな準備をさせます。地元では、伊能忠敬が現地入りする前に予備調査を行い、予め大まかな地図を作成しておきます。伊能忠敬の測量隊が現地入りすると、その地図が正しいかどうかを最新の計測器でチェックし、修正します。このようにして、次々と正確な地図を作っていったというわけです。

伊能忠敬の地図製作には、国と地域が一体になった、緻密なバックアップ体制があったのですね。

第190回 完全無農薬野菜への挑戦

私はマンションの一階の専用庭を使って、野菜作りをしています。それは、今年で3シーズン目を迎えます。初めの頃は、数多くの毛虫が発生して、それに悩まされました。毛虫は葉をアッという間に食い尽くします。

そこで私は来る日も来る日も毛虫退治に没頭しました。そうすると、2シーズン目からは、めっきりとその数を減らすことができました。そのコツは、葉の食われ方の観察です。葉が食われていて、その葉に黒いフンが落ちていると、「その近くに毛虫がいる」と推測できます。それが分かれば、あとは簡単です。その苗の周りの土を探ってみるのです。すると、必ずゴロンとした毛虫を見つけることができます。

さて、2シーズン目は雨の日が多く、ナメクジとヤスデの大発生に悩まされました。葉に光っている筋が見られると、それはナメクジの通った跡だと分かります。また、葉に小さな穴が開いていたり、苗の根が食われていたりすると、それはヤスデの仕業と分かります。それが分かっても、それらの虫がどこに潜んでいるかが分かりません。それらの虫を退治するという薬を少し使ってみましたが、あまり効果がありませんでした。

そこで私はある作戦を思い立ちました。それは、「安らかなねぐら作戦」です。具体的には、次の通りです。

まず畑の中でそれらの虫が潜んでいそうなところに、薄いレンガを置きます。それらの虫に安らかなねぐらを提供するのです。すると、夜中に葉をかじって満腹した虫たちは、明け方になると、そのレンガの下にもぐって、そこをねぐらにします。朝になると、私はそのレンガや庭のあちこちにあるプランターを一つ一つ全てひっくり返してチェックします。すると、そこにかなりの虫が潜んでいます。それらを退治していくというわけです。

私は、その作業を出勤前に、毎日毎日約数十分かけてやり続けました。すると、確実に虫は減り続け、被害を食い止めることができるようになりました。それはとても根気のいる作業でしたが、これでほぼ完全な無農薬栽培を実現することができました。しかし、こんなことは区画がはっきりした狭い場所だからできることで、普通の農地でやることは不可能なことでしょう。

この体験から、そのような土地で野菜を作るお百姓さんの苦労がよく分かりました。それとともに、虫たちと知恵比べする楽しさも味わうことができました。しかし、ここで安心して手を抜くことはできません。またいつ何時、虫たちが大発生するかもしれません。心を引き締め、毎朝毎朝レンガめくりをする今日この頃です。