第257回 「9時10分前」という言葉の意味

先日、健康社会学者(Ph.D.)である河合薫氏の文章を読みました。氏の講演会後の懇親会で、管理職達の「20代の社員達の日本語能力低下に悩まされている」という話で盛り上がったそうです。

例えば、ある管理職が主催した9時スタートの研修会では、5分、10分の遅刻をする社員が多かったそうです。そのため、「次回からは、必ず9時10分前には集合しているように」と注意したそうです。すると、その言葉に対してキョトンとした顔をする人もいたそうです。そこでその人は、「まさか」とは思いつつも、「8時50分に来ること」と補足して伝えると、「あっ、そういうことか」と返されたそうです。

その話が出ると、次から次へと同じような話が飛び出したそうです。例えば、「部下に『そのタスクは結構骨が折れるから覚悟しておけよ』と言ったら、『え、それって肉体労働なんですか』と返された」などです。

河合氏は、そのような「日本語能力低下の原因」として、「小学生時代に読書の習慣をもたない」ことを挙げています。小学生時代に読書習慣をつけておかないと、中学、高校と進むにつれ、ますます本を読まなくなるようです。

第256回 ノーベル賞をとれる基礎

私は先日フェイスブックで、とある大学で教授をしている人の話を読み、興味を覚えました。その方によれば、日本の学校教育では、理科の授業において、テキスト上の勉強だけではなく、実際に自分の手を使って実験することに重きをおいている。また、高校では大学の研究室に生徒を連れて行き、最先端の技術を体験させる取り組みをしているところもある。こうした授業内容が子ども達の興味を引き出し、将来の夢につながり、ひいてはノーベル賞受賞にもつながっていくのではないかとのことでした。

最近は塾においても、理科の実験に力を入れておられるところもありますが、それはとても素晴らしいことだと感じます。

第255回 言葉遣い

ある新聞の記事を読んでいて、学校の職員室で次のような会話がなされていることを知り、子どもたちの国語の環境に不安を覚えました。

「遠足、雨で延期になりそうだよ。」「マジか。」

「書類の提出期限、今日だったよね。」「ヤバい、忘れてた。」

さらに、次のような会話もあるようです。

「○○さんの絵、メチャクチャいいね」「メッチャ、いけてるよね。」

これらの会話は、若い先生方だけでなく、学校をけん引する立場にある中堅教員の中でも行われているとのことです。このような言葉を使うと、子どもとの距離が縮まるような気になるので、使われるのでしょうか。

言葉遣いが丁寧で、敬語も上手に使える人は、人格的にも尊敬されると思います。また、美しい言葉遣いを聞いた子どもたちは、それを真似することで語彙も豊富になり、国語力もアップしていくと思われます。家庭内や塾内で、もし子どもが「メッチャ、ヤバい!」などの言葉を発したときは、「それでは何のことかわからないので、そこのところを詳しく説明してくれないかな」などと、もっと子どもから言葉を引き出してあげることも大切かもしれません。

第254回 伸びる子どもの条件

この頃、職場に入ってきた次のような新人に手を焼く、という話をよく聞きます。

1.注意するとひどく落ち込む。

2.注意に反発する。

3.「どうもこの仕事は自分には合わないみたいです」などと、すぐに音を上げる。

4.理不尽な要求や叱責をする取引先や客にキレてしまい、せっかくの関係を台無しにする。

また、学生達と接している大学の先生にも、「最近は、我慢ができない者が多い」や、「すぐに『心が折れた』と言い出す者が多い」と感じる人が多いようです。また、学生達と話していて、「もうちょっと頑張ってみたらどう?」みたいなことを言うと、「いいんです。どうせ無理だから」「意思が弱いから無理です」「頑張ったっていいことないし」などという人もいるようです。

なぜ、このような若者が増えているのでしょうか。私は、『伸びる子どもは○○がすごい』榎本博明 著〈日経プレミアシリーズ〉を読んで、その本質をつかむことができました。それを理解するための一つのキーワードが「復元力〈レジリエンス〉」のようです。

この力は、子どもの頃に何か失敗したり、自分の思うようにいかないことがあっても「なにくそ!」と思い、それをはね返していくような力です。最近は、「叱るより、褒めて育てる」などの教育論が盛んなようですが、「悪いことは悪い」として毅然と叱ることは、とても大切なようです。

最近の幼稚園教諭を対象とした調査では、最近の親について、次のような感想を持つ人が多いようです。

1.過度に世話を焼く親が目立つ。

2.とにかく甘やかす親が目立つ。

3.自己中心的な親が目立つ。

4.マナーが悪い親が目立つ。

5.子どもをしつけるという自覚のない親が目立つ。

6.子どもの機嫌を伺うような親が目立つ。

もし、このような傾向が進んでいるとしたら、子どもの「復元力」を鍛える機会はどんどん少なくなっていることでしょう。「子どもを叱るのはかわいそうだ」と思って叱らないで子育てすると、マナーや常識が欠落した人間となってしまい、子どもが社会に出たとき、簡単に『心が折れた』などという状態になりやすいと思われます。

子どもは、自然の状態だと衝動のままに動きます。子どもを自由にさせるということは、衝動のままに動くことを認めることになりますが、それでは社会生活を送れません。そして、叱られることで「折れない心」が作られていきます。親が子を叱るということの根底には、「子どもが立派な人間に育って欲しい」という親の愛情があふれていることでしょう。

甘やかされて育ってしまった子どもは、社会に出てからそれを修正しようとしても、なかなか直らないという厳しい現実があるようです。親は、子どもの力を信じて温かく見守りつつも、「ダメなものはダメ」という厳しい姿勢で子どもに接することが大切なようです。